第50章

黒いジャケットの男が、ようやく口を開いた。

「水原さん」

葵は顔を上げた。

「どちら様」

男の声は低い。

「あなたに会いたがっている人がいる」

「誰」

「行けばわかる」

葵は男を見据え、冷ややかに返した。

「行かない」

男はそう返されることを最初から知っていたようだった。

一歩、前へ踏み出す。

「手荒な真似はさせないでくれ」

葵はスマホの画面を点灯させた。

「呼んだ車がもうすぐ来る」

黒ジャケットの男が低く笑う。

「その車は来ないよ」

言葉が終わるか終わらないかのうちに、葵のスマホ画面で配車アプリが通信エラーの警告をポップアップさせた。

偽装基地局によるジ...

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